スパーズが、ポチェッティーノが、補強をしなかった理由

フランスの20年ぶりの優勝で幕を閉じた4年に1度のフットボールの祭典から約4週間が経過し、欧州トップリーグではプレミアリーグが先陣を切って開幕を迎えました。

 

そして、開幕を迎えるにあたり、今夏は昨夏までに比べて大きな変更点がありました。

移籍マーケットでの新加入選手の獲得期限が開幕前に定められたことです。来夏からは他のリーグも開幕前に期限を設ける話があるようですが、今夏に関してはプレミアリーグだけです。CL、ELの組み合わせ抽選後に補強ができる他のリーグとプレミア勢の差が欧州の舞台で表れるのかは興味深い点でもあります。

 

そして、私が贔屓しているトッテナム・ホットスパー、通称スパーズは新戦力の獲得なしという結果に終わりました。これは2003年以来プレミアリーグで初めてのことらしいです。ちなみに現時点では放出もありません。

さらにいえば、昨シーズンも開幕戦時点では獲得がありませんでした。その後、計5選手の獲得に至ったわけですが、こうして考えると移籍マーケット短縮のあおりを受けた結果とも言えるかもしれません。

 

 

 

閑話休題

ここからはなぜ補強をしなかったのかを考えていきます。

 

新スタジアム建設による経営の圧迫、放出ができなかったためスカッドの人数を増やすことができなかった、現有戦力に満足している(いわゆる我スカ)など、それらしい理由はいくつか出てくると思います。

 

新スタジアム建設による影響ですが、これは直接的な理由にならないと思います。仮に苦しい財政状況で、それがチーム編成に影響を与えるのであれば、やることは一つです。

 

主力の売却です。

 

しかし、スパーズはケインやアリといった高額な移籍金が見込める選手を放出する動きは一切見せることはありません。放出濃厚と思われていたアルデルヴァイレルトデンベレは国外移籍の可能性は残るものの、現時点で残留濃厚とみられています。

 

スカッド人数については理由の一つではあると思いますが、そのあたりのバランスはどのチームも考えることです。プレミアとCLを並行して戦うのは量と質の両立が必要です。

スカッドの人数というのは量の話ですが、補強を求めるファンはどこかしらのポジションの質の部分に不満を抱いていることが考えられます。しかし補強をしなかったのは、ポチェッティーノにとっては質の部分でも大きな不満はなかったというところに尽きると思います。

 

実際、スパーズが今夏最も熱心に注視していたと言われているのは、イングランド2部のアストンビラに所属する、グリーリッシュという中盤の攻撃的な選手です。

彼は将来を有望視されている選手ではありますが、ここ3シーズンのプレミアリーグを3位以上で終え、今シーズンもCLを戦うスパーズの即戦力と言えるかは疑問の余地が残ることも事実です。その彼に対してさえも、獲得できたらいいが、できなくても仕方ないいうスタンスでした。

 

私の考えははこうです。

 

ポチェッティーノ監督にとって、現在のスカッドが1番扱いやすかったのではないかと。

ポチェッティーノのチームを私が4年間見てきて感じるのは、忠誠を最も重視する監督だということです。ポチェッティーノがスパーズの監督に就任して、1年目にはカブール、カプー、レノン、アデバヨールといった経験のある選手たちが練習態度などの理由で干されました。

逆にポチェッティーノがトップチームでのチャンスを与えて、イングランド代表に名を連ねるようになったアカデミー出身の選手たちがいます。彼らは、スパーズのユニフォームを着てプレミアリーグの舞台に立つことを憧れ、高いモチベーションでチャンスを掴みました。

そして、そういった選手こそが監督に忠誠を誓う選手です。

また、シソコのように貢献度は大きくないものの、起用法や出場機会に不満を言わず、監督の信頼を掴もうと日々ハードワークする。そういった真面目で扱いやすい選手をポチェッティーノは好んで起用します。

 

彼のフットボールは、戦術面ではイングランド国内にとどまらず、欧州でも一定の評価を得ていると感じています。しかし、交代策やターンオーバーを得意としている監督ではなく、スパーズファンも不満を溜めがちな部分ではあると思います。

仮に20人の一流選手を集めれば、選手を入れ替えてもチームの質は落ちないかもしれません。しかし、20人の満足する出場機会を与えるのは難しいはずです。それならポチェッティーノは14.15人のスタメン候補と数人のモチベーションが高いバックアッパーやアカデミーの選手というスカッドでシーズンを戦おうと考えたのでしょう。

 

スパーズファンの間ではレヴィ会長に対する不満も見られます。実際、最終決定権は彼が握っています。

しかし、今夏の新戦力獲得なしという結果は、ポチェッティーノの監督としての能力や傾向が反映されたものだと私は考えます。